ななころびやおき

気の向いたときに趣味で投稿します。ゼロ戦は21型が一番好き。

9-nine-を全章クリアしたので感想

『9-nine-』という美少女系ノベルゲームがある。

 

五部構成になっていて、各々のタイトルは1部『ここのつここのかここのいろ』、2部『そらいろそらうたそらのおと』、3部『はるいろはるこいはるのかぜ』、4部『ゆきいろゆきはなゆきのあと』、5部『9-nine-終章』となっている。

 

物語のあらすじは、ある時突然にして異能に目覚めた人たちが世の中に出てきて、その中から人間を石に変えてしまう凶悪犯罪者が出現して、主人公は事件の解決のために頑張る、というもの。その過程でヒロインと恋に落ちたりする。

 

数日かけて全部クリアしたので感想を書こうと思う。

 

 

以下、ネタバレ注意。

(※途中で√という単語が出てくるけれど、これはそのヒロインを主軸にしているお話という意味合いの略語。読み方はそのままルートで良い)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最高だった。

 

この手のゲームはこれだからやめられない。時々凄い名作が生まれる。

お話が面白かったよ。かずきふみ、という人がシナリオライターを担当したらしい。

ライター買いする対象がまた増えたね。

 

死に戻ってリトライしたり。

我々プレイヤーが実は物語に介入していたり。

主人公が我々の存在を知って支援を求めてきたり。

メタを物語に落とし込んでいるのが素晴らしい。伏線の回収が見事だった。

 

このお話を書いた人は『高機動幻想ガンパレード・マーチ(略称ガンパレ)』とか『マブラヴオルタネイティブ』とか『ペルソナ4』とか好きに違いない。年代によっては『Re:ゼロから始める異世界生活』を思い浮かべる人もいるかもしれない。個人的にはプレイヤーの物語介入とかモロにガンパレのOVERSを感じたよね。

 

希亜√からの強引な展開の連続で強くそう思った。

 

そう。都、天、春風√までは自然だった。

主人公の好みとかもあるしで自然に√分岐していた印象はあった。

 

√分岐フローチャートを見ても、この三人の√までは枝分かれするように話が繋がっている。これは主人公がこの三人となら誰と付き合っても不思議ではないことを示している。

 

けど、希亜√はプレイヤーが世界を救うために意図して無理矢理作った√なんだよね。何もなかった、何の繋がりもない地点にいきなり人工的に作られた。

 

主人公にとって希亜は頼れる仲間ではあっても異性として意識する相手ではない。だから本来希亜√分岐はあり得ない。異性として意識する可能性があるとしても、そこまで行く前に都、天、春風のいずれかと結ばれる。

 

でも、それでは事件は完全に解決できない。

自分達の平和な日常は得られずに世界は危機のままだ。

 

世界を救ってハッピーエンドを迎えるためには最後のヒロインである希亜のことをよく知らなければならない。そのことが3部である春風√で判明した。

 

それを自覚した主人公は我々プレイヤーに頼んで時間を巻き戻してもらい、希亜との出会いからやり直した。その結果、主人公は希亜の魅力に気づいて付き合うことになり、希亜のことをよく知り、希亜の弱点を克服して、平行世界(各分岐√)に介入できるプレイヤーの助けもあり、ラスボスに勝った。

 

この介入感。そして作中の登場人物がプレイヤーの介入を認知している感じ。ガンパレを思い出す......。

 

でもガンパレほど殺伐とはしていない。特にクリア後のこのハートフルな満足感は『ノラと皇女と野良猫ハート(略称ノラとと)』をプレイしたとき以来のものだ。とっても良い物語をありがとう。ノラととを好きな人なら9-nine-はハマるのではないだろうか。

 

正直、5部の終章までやろうかどうか悩んだ。物語自体は4部の希亜√で終わったことだし。どうみてもファンディスクにしか見えなかったから。

 

けど実際には終章の名に相応しいものだった。

終章までプレイしてこの物語は大団円を迎える。

 

まあ......与一とラスボスを倒した世界線の主人公の救済はないままだったんだけど......。勧善懲悪路線のお話なので与一の末路は仕方ないにしても、主人公のほうはさぁ......介入できるんだから救ってやれよ......沙月ちゃん√とか作ってさぁ......。

 

そう。この手のゲームあるあるの「このキャラは魅力的なので攻略したいけどサブキャラだから√分岐が存在しない」という問題。今作品にもあった。正式にファンディスクを出してくれた暁には是非とも沙月ちゃん√とレナ√とゴースト√とハーレム√を頼みたいものだね。

 

最近はこういうジャンルのゲームはやらなくなっていたけれど。

良いゲームはハマるとプライベート時間のほとんどを費やしてしまうね。

 

ヒロインが可愛いだけだったら即刻飽きていたと思う。

だけど、本筋の話が面白いので夢中になっていた。

 

とはいえ、ヒロイン達の作り込みも凄いんだよなあ。

 

その子に対して何をしてどういうリアクションが返ってくるのか容易に想像できる。

 

これって「この子はこういう子です」というのを物語中でしっかり描写して伝えることができている証拠なんだよね。ライターの腕前なんだよね。

 

キャラクターという記号で誤魔化していない。人物を描いている。ヒロイン一人作るまでに途方もない時間がかかったに違いないよ。

 

特に天は凄い。天は主人公の実の妹なのだけど、作中では実の妹って感じが凄いする。

 

何を言っているんだと思うかもしれないが、創作物で実妹感を出すってけっこう大変なんだよ。ここでは主人公と仲の良い実妹感ね。

 

可愛いけど異性として見れなかった。俺の妹でもないのに。これを表現できるのって凄いことなんだよ。

 

こういうゲームでは妹と言いつつも実際には妹の皮を被った天使みたいな女の子をヒロインとして出すパターンが多いのに。この作品では空想上の妹と現実の妹との中間地点を目指しながらも実妹感は出すという職人芸をやっている。

 

いや、実際のところ空想上の実妹像には違いないと思うんだけれど......現実に実在していそうな感じを出すのがうまい。この作り込みようは......もしかしてライターさん随一のお気に入りキャラクターだったりしない?

 

ちなみに俺のお気に入りのヒロインは都です。

 

試しにとプレイを始めた1部目のヒロインが都じゃなかったらこのゲームを続けていたかわからない。俺の9-nine-は都で始まり都で終わった。

 

他ヒロイン達と比べると癖は少ないのだけど、やたらと自分の自転車のカゴに友達の荷物を入れさせたがるところとか、仲間と焼肉パーティーしたら無意識に肉焼き配布マシーンと化していたりとか、飛び交う中二病ワード満載の会話になんとか適応しようと頑張るところ(※頑張らなくていい)とか、覚醒して本気になったら作中最強なところとか、いいよね。

 

他ヒロイン達が濃いので、都の遠慮がちな性格もあって地味な印象を持ってしまうのだけど......強い光では成し得ない、淡い光にしか出せない癒しがそこにはあるのですよ。

 

 

 

この数日間楽しかった。面白い作品は長編作品でも短時間で終わったように感じる。

 

次、こんな名作に出会える日はいつになるだろうか。一文一文を最後まで読み飛ばさずに進めた。生きる理由と仕事を続ける理由になってくれていた。質の良い二次元は人生のガソリンだ。

 

かずきふみ氏の今後の活躍に期待しよう。うん。